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設計事務所とゼネコンの役割とは何か?それぞれの関係性を徹底解説
ゼネコンと設計事務所の違い、きちんと理解できていますか?
「建築プロジェクトを依頼するならどこに相談すべき?」「設計と施工って、そもそも誰が担当しているの?」といった疑問を抱えていませんか。建設業界は一見シンプルに見えて、実はゼネコン、設計事務所、そして施工管理など多くの専門部署が関わる複雑な構造になっています。
特に設計業務と施工管理を分業するのか、それともゼネコンが一括で担うのかは、発注者側にとってコスト面、納期、品質すべてに影響します。たとえば、大手ゼネコンの設計部門では、構造や設備まで一貫して対応可能な一方、組織設計事務所では意匠や基本設計の自由度が高いのが特長です。設計事務所の選び方ひとつで建築コストが数百万円変わることも珍しくありません。
この記事では、設計とゼネコンの立ち位置の違いや、プロジェクト成功に不可欠なパートナー選定のコツを解説します。
最後まで読むと、あなたが抱える設計や発注の悩みをクリアにできるだけでなく、後悔しない選択をするための具体的な判断軸が手に入ります。建物を建てる前に、読むべきはここです。
設計事務所とゼネコンの基本概要 まず知っておきたい建築業界の構造
設計事務所とゼネコンの定義と分類
建築業界では「設計事務所」と「ゼネコン(総合建設業者)」という言葉が頻繁に登場しますが、その役割や立場は大きく異なります。混同しやすいこの二者の違いを正しく理解することは、建築プロジェクトを成功に導くために非常に重要です。
設計事務所は、主に建物の意匠設計・構造設計・設備設計などを担うプロフェッショナル集団であり、クライアント(施主)の要望をもとに、建築の企画から基本設計・実施設計・監理業務までを手がけます。設計事務所には、アトリエ系の小規模事務所から、数百人規模の組織設計事務所まで存在し、それぞれに得意分野や特徴があります。
一方、ゼネコンは設計から施工まで一貫した工程を担うことができるのが特徴です。設計図に基づいて実際の建物を建設する「施工」を請け負うこともあり、大林組・鹿島建設・清水建設・大成建設・竹中工務店などが代表的なスーパーゼネコンとして知られています。ゼネコンは建築工事全体を統括する立場であり、工程管理・品質管理・安全管理・コスト管理といった施工管理を通して建設プロジェクトを実現させます。
また、設計事務所とゼネコンの関係性として、「設計・施工分離方式」と「設計・施工一括方式(デザインビルド方式)」という発注形態の違いもあります。設計と施工を明確に分離することで、設計者の中立性を保ち、コスト管理や設計意図の貫徹が図れる一方で、一括方式はプロジェクトの一体化による効率性とコスト削減が見込めます。
建築プロジェクトの規模や目的に応じて、どちらを選ぶべきかを検討する際、これらの分類と特徴を正確に把握しておくことが求められます。
設計・施工・管理の役割分担
建築プロジェクトは、複数の工程に分かれ、設計・施工・管理それぞれの専門家が連携して進めていきます。どのフェーズで誰が主導するか、そしてそれぞれの業務がどのように役割分担されるのかを理解することは、施主が失敗しない業者選びをする上で欠かせません。
設計フェーズでは、施主の要望や敷地条件、法規制をもとに設計事務所が建物の計画を立てます。基本設計から実施設計に至るまで、図面を用いて建築の形状・構造・使用材料などを決定し、最終的には建築確認申請を通して法的な承認を得ます。
その後、施工フェーズでは設計図をもとに施工計画を立て、協力会社(下請け業者)を選定し、工程を組み立てます。実際の工事現場では、安全・品質・コスト・工程の4大管理が行われ、設計通りに建物が仕上がるよう徹底したマネジメントが行われます。
管理(監理)フェーズでは、設計事務所が引き続き関与し、図面と異なる施工がなされていないか、現場で不具合が起きていないかをチェックします。この「監理」は「管理」と混同されやすいですが、施工を直接的に管理するわけではなく、設計者の立場から工事全体を俯瞰する業務です。
このように、設計と施工が明確に分担されていることは、品質・コスト・スケジュールの最適化につながります。建築主(施主)は、各業務の役割と責任の所在を把握することで、プロジェクト全体のリスクを軽減できます。
工事請負契約と設計契約の違いとは
建築プロジェクトを実施するにあたり、施主が締結すべき契約は大きく2つに分かれます。設計事務所との「設計契約」、そしてゼネコンとの「工事請負契約」です。この2つは、契約主体・業務内容・報酬体系・法的責任などにおいて明確な違いがあります。
設計契約とは、建物の設計を専門とする設計事務所と締結する契約であり、主に意匠設計・構造設計・設備設計・建築確認申請・設計監理業務が含まれます。報酬は、総工事費の一定割合(5~12%程度)が基準とされることが多く、国土交通省の「設計業務報酬基準」などを参考にして設定されるケースが一般的です。
一方、工事請負契約は、施工を担うゼネコンと結ぶ契約であり、実際の建築工事を施工するための詳細な仕様書と金額に基づいて締結されます。
以下は、設計契約と工事請負契約の比較です。
契約項目 | 設計契約 | 工事請負契約 |
契約相手 | 設計事務所 | ゼネコン(施工会社) |
主な業務内容 | 設計図作成、確認申請、設計監理 | 建築工事一式(施工管理含む) |
契約時期 | プロジェクト初期段階 | 設計完了後、施工段階前 |
報酬体系 | 工事費に対する割合(約5~12%) | 請負額(設計内容に基づく見積) |
契約書で重要視される点 | 業務範囲、成果物、納期、変更時の対応 | 工期、工事内容、遅延補償、瑕疵担保責任 |
契約解除の条件 | 通知による契約解除、業務不履行等 | 工期遅延、重大な契約違反など |
また、設計監理が独立して行われる分離発注方式では、設計事務所がゼネコンの施工をチェックできる中立的な立場を維持できますが、一括方式ではチェック機能が弱まる可能性もあります。どの契約形態がプロジェクトに適しているかは、規模・予算・リスク許容度により異なります。
契約段階での判断ミスは、後の施工遅延・予算超過・設計意図の不一致などの問題を招くため、施主は設計契約と工事請負契約の性質をよく理解し、信頼できるパートナー選びと契約内容の精査が求められます。
設計事務所とゼネコンの関係
設計事務所が担う業務範囲とは
建築プロジェクトにおいて、設計事務所が担う業務範囲は非常に広く、しかも専門的です。建物の基本的な構想を描き、構造や設備の安全性・機能性・快適性を確保することはもちろん、施主の要望を形にする役割も果たします。ここでは、意匠・構造・設備という設計の三本柱に分けて、設計事務所の業務範囲を明確にします。
まず意匠設計は、建物の外観や空間構成を決定するもので、建築主の要望・敷地条件・法規制・デザイン性など多くの要素を統合して計画を立てます。この段階で、建物の第一印象がほぼ決まるため、設計事務所の技術力とセンスが問われます。
次に構造設計は、地震や台風などの外力に耐え得る建築物にするための基盤設計であり、鉄筋コンクリート造・鉄骨造・木造などの構造形式の選定、梁や柱の寸法・強度設計を担います。構造は見えない部分であるがゆえに、建物の安全性を左右する極めて重要な工程です。
最後に設備設計では、給排水・空調・電気・防災などのインフラ系統の設計を行います。設備設計は建物の利便性や快適性、省エネ性能に大きく関わり、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)を活用した高度な設計も進んでいます。
また、設計事務所が行う「設計監理」も見逃せない役割です。施工中に設計意図が正確に現場に伝わっているかを確認する業務であり、現場監督とは異なる中立的な立場から品質確保に努めます。
以下のような形で、設計事務所の業務範囲を工程別にまとめることができます。
設計段階 | 主な業務内容 |
基本構想 | 建築主とのヒアリング、敷地調査、法規制調査、ゾーニング案作成 |
基本設計 | 平面・立面・断面図作成、構造方針、設備方式の検討 |
実施設計 | 詳細図作成、材料仕様、法規対応図面、建築確認申請図の作成 |
設計監理 | 現場巡回、施工内容確認、図面通りの施工確認、是正指示の発出 |
このように、設計事務所は単なる図面作成者ではなく、建物の設計・品質・安全性を最前線で守る「技術と美意識の結晶体」とも言える存在です。建築主にとっては、プロジェクトの出発点から完成まで一貫して関与する信頼すべきパートナーであり、組織設計事務所、大手設計事務所、アトリエ系の事務所など多様な選択肢があることも理解しておきたいところです。
ゼネコンが施工主導で動く背景
ゼネコン(総合建設業者)は、設計事務所が描いた図面を現実の建物として「かたち」にする施工のプロフェッショナルです。ゼネコンが施工を主導する背景には、プロジェクトの規模・複雑性・多業種との調整・品質管理・安全確保といった多くの要素があります。
まず、ゼネコンはプロジェクト全体の施工スケジュールを掌握し、各工程に関わる数十〜数百の協力会社(下請け業者)を統括します。例えば、鉄筋工事・型枠工事・電気設備・内装などの専門業者を日程・コスト・安全管理の観点から調整する能力が求められます。
加えて、大規模案件になると「タワークレーンの配置」「工期中の天候予測」「仮設計画」など、工事を円滑に進めるためのノウハウも膨大です。こうした点で、ゼネコンは単なる工事会社ではなく、施工計画の立案者・マネージャーとしての役割を果たしています。
施工主導で動く最大の理由は、リスク管理の責任を一手に引き受ける立場にあるためです。ゼネコンは「建設業法」に基づき、施工ミス・工程遅延・コスト超過などすべてのトラブルに対する責任を負います。この責任があるからこそ、現場管理・安全対策・予算管理など、施工を主導する体制を整えるのです。
施工主導におけるゼネコンの主な役割は以下の通りです。
項目 | 内容 |
工程管理 | 工事スケジュール策定・進捗管理、天候や資材遅延のリスク対応 |
品質管理 | 材料検査、施工精度のチェック、施工手順の順守確認 |
安全管理 | 作業員の労働災害防止、現場環境の安全性維持 |
コスト管理 | 見積精度向上、下請け業者の価格交渉、発注・支払いの管理 |
協力会社の統括 | 多業種への指示出し、工程調整、作業内容の調整 |
特にスーパーゼネコンと呼ばれる大手企業(大林組・鹿島建設・清水建設など)は、プロジェクト遂行能力に優れ、発注者にとって大きな安心材料となります。一方で、ゼネコン設計部門の社員からは「仕事がきつい」「やりがいは大きいがプレッシャーも大きい」という声も多く聞かれます。
このように、施工主導という体制は、単に作業を管理するのではなく、建設全体を統括するリーダーとしての高度な役割を担う構造となっているのです。
分離発注と一括発注の比較とリスク管理
建築プロジェクトを実施する際、施主が最初に決断しなければならないのが「発注方式」です。代表的な方式として「設計・施工分離方式(分離発注)」と「設計・施工一括方式(デザインビルド方式)」があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
分離発注では、設計事務所と施工業者(ゼネコン)を別々に選定し、契約も個別に結びます。この方式は設計の中立性が確保され、コスト・品質管理において透明性が高くなるのが特徴です。一方で、施工段階での調整負担や、責任の所在が複雑になるという懸念もあります。
一括発注では、ゼネコンに設計・施工を一括で依頼します。設計と施工の連携がスムーズで、工程管理の効率性が高くなる反面、設計者が施工者と同一組織に属するため、コスト重視に偏るリスクがあると言われます。
以下に、分離発注と一括発注の違いをテーブルにまとめます。
比較項目 | 分離発注 | 一括発注 |
契約の形態 | 設計事務所・ゼネコンそれぞれと契約 | ゼネコン一社に設計・施工一括で依頼 |
設計の中立性 | 高い(施主寄りの立場で設計が進行) | 低くなる傾向(施工性やコストに影響されやすい) |
工期 | 調整負担が多くなりやすい | 工程短縮が見込める |
コスト透明性 | 明確(設計・施工費が独立) | 不明瞭になりやすい |
品質チェック体制 | 設計者が監理者として施工監視可能 | 監理と施工が同一組織で牽制が効きにくい可能性 |
発注者の負担 | 高い(調整・判断が都度必要) | 低い(窓口一元化で管理負担軽減) |
発注方式は、プロジェクトの規模、施主の知見、スケジュール、予算に応じて最適な形を選ぶべきです。たとえば、公共施設や美術館など、設計に高い独自性が求められる場合は分離発注が好まれ、商業施設や住宅開発のようにコストとスピードが優先される現場では一括発注が採用されるケースが増えています。
どちらの方式を選ぶにせよ、発注者自身がそのメリット・リスクを理解し、パートナー選定を慎重に行うことが、トラブルのない円滑な建築計画実現につながります。
スーパーゼネコンと組織設計事務所の違いを徹底解説
大手ゼネコン設計部門の特徴とは?
スーパーゼネコンの設計部門は、日本の建設業界において特別な存在感を放っています。大林組、鹿島建設、清水建設、大成建設、竹中工務店の五社が代表的なスーパーゼネコンであり、それぞれに設計部門を内部に持ち、意匠・構造・設備の分野を網羅する総合設計機能を備えています。設計から施工までを一貫して管理できるという構造が、最大の特徴です。
この一貫体制により、設計内容と施工方法の整合性がとりやすく、工程上のロスを削減できるという利点があります。設計段階で施工性を十分に考慮できるため、施工現場での設計変更リスクが低減し、工期短縮にもつながる点は、クライアントにとっても魅力です。
一方で、設計の自由度やクリエイティブな提案力という点では制限を受けるケースもあります。なぜなら、施工部門とのバランスを取る必要があるため、デザイン性よりも合理性やコスト管理が優先されがちになるからです。また、ゼネコン設計部では技術職としての採用が主であり、デザインに特化したキャリアパスを求める若手にとっては物足りなさを感じることもあるでしょう。
実際のゼネコン設計部の業務領域は以下の通りです。
項目 | 内容 |
設計対象 | 超高層ビル、大型商業施設、物流倉庫、病院など大規模建築物 |
設計分野 | 意匠設計、構造設計、設備設計の社内一貫体制 |
担当フェーズ | 実施設計、施工図作成、技術提案書作成、施工中対応 |
協業体制 | 社内の施工部門・積算部門・営業部門との密な連携 |
キャリアの特徴 | プロジェクトのスケール大/全国転勤あり/施工部門への異動可能性あり |
特筆すべき点は、ゼネコン設計部の採用においては、建築学科卒だけでなく土木・機械・電気などの理系出身者も歓迎されるという点です。これは、設計と同時に施工性や設備の合理化まで見越したエンジニア的思考が求められることを示しています。
しかしながら、社内設計の立場であるため、設計事務所と比べて作品性を追求しにくい点や、プロジェクトの受注状況によっては施工支援など別業務への転属も発生しやすいというデメリットも見逃せません。
このように、大手ゼネコン設計部門は「技術力」「安定性」「スケールの大きな仕事」に魅力を感じる人材にとっては非常に有利なキャリアパスを提供しますが、自由なデザイン提案や専門性の深掘りを望む設計者にとっては、やや制約が多い環境とも言えるでしょう。
組織設計事務所の設計力と対応幅
組織設計事務所とは、数十名から数百名規模の設計者が所属し、意匠・構造・設備の三部門を社内に揃える専門集団のことを指します。設計専門職としてのキャリア形成がしやすい点、また設計のプロフェッショナルとしての深い専門性が求められる環境であることが、大手ゼネコン設計部との明確な違いです。自由度の高い設計提案、コンペ参加、BIM・DXを活用した最先端の建築技術導入など、設計者としての創造性を発揮できる場面が多い点が魅力です。
対応可能な建築物のジャンルも非常に広く、教育施設・病院・空港・庁舎・大規模マンションなど、用途や発注者の違いによる柔軟な設計対応が求められます。特に公共施設の実績が多く、設計競技での入賞歴や国際コンペでの評価が高いことも多く見られます。
以下に、組織設計事務所の設計力と対応範囲をまとめます。
比較項目 | 組織設計事務所の特徴 |
得意分野 | 公共建築、病院、空港、文化施設、大学施設 |
設計体制 | 意匠・構造・設備を社内で統合/プロジェクト毎に設計チーム編成 |
提案力 | ゼネコンよりも高く、コンペ対応力・独自性・デザイン性に優れる |
社内文化 | 設計専門職が中心/技術部門とデザイン部門のバランスが良好 |
キャリア特性 | 設計に特化した職能型キャリア形成/海外案件にも参画可能 |
組織設計事務所では、プロジェクトマネジメント能力も高く評価されており、施主の要求に応じたスケジュール管理・コスト調整・法令対応の知見を求められます。また、地方自治体や大学・研究機関からの指名を受けてプロジェクトを任されるケースもあり、社会的な信頼性と責任が重い立場です。
こうした環境においては、若手でも大規模な建物の計画段階から関与できる機会が多く、専門性の高い育成制度や研修体制が整っていることが多いのもポイントです。ゼネコン設計部と比べると、異動や転勤は少なく、腰を据えて設計に集中できるのも特徴の一つです。
規模と専門性で見た業務比較
スーパーゼネコンの設計部門と組織設計事務所は、いずれも高い設計能力と技術力を持つ存在ですが、その組織の成り立ちやミッション、得意分野は大きく異なります。ここでは、読者が自分の目的やキャリア志向に合った選択ができるよう、規模・設計分野・体制・専門性などを軸に比較していきます。
まず、組織の規模で見ると、スーパーゼネコンの設計部は建設会社の一部署に位置づけられるため、数百名〜千名以上のスタッフを抱える企業もあります。これに対して、組織設計事務所は社内すべてが設計専門でありながら、総勢100〜500名程度が平均的な規模です。
また、得意とする建物の種類にも違いがあります。ゼネコンは物流倉庫や商業施設、ホテル・オフィスビルなど工期が重視される建築物を得意とし、施工と設計を一体で進めることによってスピードと効率を高める体制が整っています。対して、組織設計事務所は文化施設や教育施設、病院など、デザイン性と公共性が求められる案件に強く、建築主(施主)との設計方針のすり合わせを丁寧に行います。
以下のテーブルは、スーパーゼネコンと組織設計事務所の比較表です。
比較観点 | スーパーゼネコン設計部門 | 組織設計事務所 |
組織規模 | 数百〜千名規模/建設会社の内部部門 | 100〜500名規模/設計専門組織 |
主な業務内容 | 実施設計、施工図、技術提案、施工支援 | 意匠設計、基本設計、設計監理、コンペ対応 |
得意建築物 | 商業施設、物流施設、ホテル、工場など | 文化施設、庁舎、医療施設、教育施設など |
設計の自由度 | 低め(施工制約・コスト優先) | 高め(デザイン性・施主意向重視) |
キャリアの特性 | 安定・福利厚生・異動あり | 専門性追求・設計集中・長期育成 |
海外プロジェクト対応 | 多い(グローバル建設案件) | 一部あり(国際コンペやODA関連等) |
このように、両者の違いを理解することで、施主にとっては依頼先選定の判断材料となり、また就職・転職を考える人にとっても将来設計の道筋を明確にするヒントとなるはずです。建築プロジェクトの性質や目標、求める成果に応じて、適切なパートナーを選択することが成功の鍵となります。
ゼネコン設計部の仕事内容 実態・やりがい・離職率のリアルを暴露
日常業務とプロジェクトの流れ
ゼネコン設計部の仕事は、ただ図面を描く作業ではありません。建築プロジェクトの初期段階から竣工まで、あらゆるフェーズにおいて関与する役割を担っており、プロジェクト全体の流れに沿って業務が変化していきます。そのため、計画性と柔軟性の両方が求められる仕事です。
ゼネコン設計部の日常業務は主に次の4つのフェーズに分類されます。
フェーズ | 主な業務内容 |
基本設計段階 | 発注者との打ち合わせ、設計コンセプト立案、基本プラン作成 |
実施設計段階 | 建築基準法・条例・各種規格に基づく図面作成、構造・設備との整合確認 |
施工支援段階 | 施工図チェック、現場からの技術的質問対応、仕様書・工法調整 |
竣工・引き渡し段階 | 検査対応、設計内容との整合確認、施工記録の整理、設計意図の伝達 |
多くの設計部では、意匠・構造・設備の3部門が分業され、各分野の設計者がプロジェクトごとにチームを編成します。大手ゼネコンでは特にこの連携体制が強化されており、施工部門や積算部門とも密接に連携して設計業務を進めます。
また、クライアントである施主や建築主の要望を技術的に落とし込む能力も重要です。特にスーパーゼネコンでは官公庁案件や大型商業施設など、社会的責任の高いプロジェクトが多く、公共性と実現性のバランスを取る高度な調整が求められます。
ゼネコン設計部の1週間のスケジュールイメージは以下の通りです。
曜日 | 主な業務内容 |
月 | 設計ミーティング、週次進捗報告会議 |
火 | 図面修正、施主対応、構造・設備打合せ |
水 | 施工部門との工程会議、現場確認 |
木 | 各種申請書作成、法規対応 |
金 | 設計レビュー、社内共有、BIM操作 |
日常業務には細かな調整や確認作業も多く含まれており、「大規模=華やか」とは限らず、技術者として地道な作業も欠かせません。それでもプロジェクトが竣工した際には、地図に残る達成感と社会への貢献という強いモチベーションに繋がるため、業務のやりがいは非常に高い分野です。
若手が感じるきつさの本質とは
「ゼネコン設計部はきつい」といわれる理由には、いくつかの明確な構造的課題と、個々の体験から来る心理的要素が存在します。まず挙げられるのが長時間労働です。設計の締切に間に合わせるため、特に実施設計フェーズでは残業や休日出勤が常態化しやすい環境にあります。
次に、若手社員が感じるきつさの本質には以下のような点が挙げられます。
- 業務範囲が広く、求められる知識が膨大
- 社内外の関係者が多く、調整力・対人スキルが必要
- 技術職でありながらプレゼン力・コミュニケーション力も重視される
- 残業や深夜対応が習慣化している部署もある
- 成果が見えるのが数年後という長期スパンの評価構造
これにより「自分の設計がどう役立っているのか実感しにくい」「評価されるまでが長すぎる」といった悩みが生まれやすくなっています。また、実際に現場との距離を感じ、施工部門との連携に苦労する若手設計者も少なくありません。
以下は某転職サイトに投稿された若手設計技術者の口コミの一部です。
コメント内容 | 傾向 |
現場からの急な仕様変更が多く、休日も対応を求められる | ワークライフバランスの難しさ |
学生時代にはなかった社内調整業務に疲れる | 業務範囲の広さと責任感 |
入社2年目でも大規模案件にアサインされ、緊張の連続 | 育成とプレッシャーの両立 |
しかしその一方で、早期に大きなプロジェクトに関われることや、手がけた建物が実際に街の風景として残る点は、「大変だけれどやりがいがある」と感じる要素にもなっています。
まとめ
設計事務所とゼネコン、それぞれの役割や違いを正しく理解することは、建築プロジェクトの成功に直結します。特に設計段階から施工までを一貫して管理するゼネコンの設計部門と、意匠設計に特化した組織設計事務所の選択肢は、費用や品質、完成までのスピードにも大きな影響を与えます。
例えば、ゼネコン設計部は施工の実現性を重視した設計が得意であり、コストコントロールや工程管理にも優れています。一方で、組織設計事務所は自由度の高い意匠提案が可能であり、独自の建築デザインやまちづくりへの提案力が評価されています。どちらを選ぶかは、建物の用途や規模、施主の目的によって最適解が異なります。
また、発注方式によっても大きな違いがあります。分離発注は透明性が高い一方で、調整コストや工期の管理が複雑になりやすく、一括発注ではスムーズな進行が期待できる反面、設計の自由度に制約が出ることも。建設業法第22条でも設計と施工の責任範囲は明確に分けられており、発注者はこの違いを把握することが重要です。
現在では、大手ゼネコン各社が設計部の強化を進めており、意匠や構造、設備といった領域での高度な社内連携が進んでいます。一方で、設計事務所は特定分野に強みを持つプロフェッショナル集団として、大学や病院、文化施設など専門性の高い建築物で評価を得ています。
建築主として失敗しないためには、自身のプロジェクトに必要な技術や管理力、そしてクリエイティビティを見極め、それに適したパートナーを選ぶことが最も重要です。今後のプロジェクトで後悔しない選択をするために、この記事の情報を役立ててください。施工や設計のどちらか一方だけに頼るのではなく、両者の得意領域を理解したうえで、最適な発注体制を構築する視点が問われています。
よくある質問
Q. 設計事務所とゼネコンでは、設計費や施工費にどれくらいの違いがありますか?
A. 一般的に設計事務所に依頼する場合、意匠設計費は建築費の約5〜12%が目安となります。一方、ゼネコンの設計施工一括方式では、全体の建設費の中に設計コストが含まれており、設計費として明確に分離されないケースも多くあります。ただしゼネコンでは工程管理費や利益確保分が上乗せされるため、トータルでは設計事務所+工務店に依頼するよりコストが高くなることもあります。特に建物規模が3000平米を超えるようなプロジェクトでは、ゼネコンの施工一貫性がコスト効率に繋がるケースもあるため、費用と工程のバランスを検討することが重要です。
Q. ゼネコンの設計部と組織設計事務所の仕事の違いは何ですか?
A. ゼネコンの設計部は、施工会社としての視点から「実現可能な設計」を重視します。施工管理やコスト調整との連携が密で、工程管理も含めた設計業務が中心です。対して組織設計事務所は、意匠性や構造・設備の自由な提案が可能で、公共施設や病院、教育施設など特定分野に強い専門性を発揮するケースが多く見られます。また、図面の作成業務だけでなく、設計監理や施主とのコミュニケーションも深く関与するため、柔軟性と創造性が求められる点も大きな違いです。
Q. 設計事務所とゼネコン、どちらに依頼するのがコストパフォーマンスが高いですか?
A. 個人住宅や中小規模の商業施設などでコストを重視する場合、設計事務所と施工会社を分離発注することで費用を抑えやすい傾向があります。逆に大型プロジェクトや短納期を要する案件では、ゼネコンによる設計施工一括発注が工期短縮や品質担保に寄与する場合が多く、長期的な視点で見たコストパフォーマンスが高くなることもあります。例えば、建築面積500平米以上かつ複数部署が関与する施設の場合、ゼネコンのプロジェクトマネジメント能力が利点になります。
Q. 組織設計事務所からゼネコン設計部に転職する場合、年収や待遇はどう変化しますか?
A. 組織設計事務所では意匠に特化した設計業務が中心となるため、自由なデザイン経験が蓄積されますが、ゼネコン設計部では実施設計やVE提案、現場との調整業務が加わるため、業務の幅が広がります。年収ベースでは、30代前半で500万円前後、40代で700〜900万円程度がゼネコン設計部の相場とされており、組織設計事務所よりも高くなる傾向があります。福利厚生や住宅手当なども大手ゼネコンでは充実しており、ワークライフバランス面でも環境改善を期待する人が多く見られます。キャリア形成においても、ゼネコン側では施工知識や技術提案力が評価され、管理職への昇進も比較的早いケースが報告されています。
会社概要
会社名・・・株式会社巽
所在地・・・〒338-0832 埼玉県さいたま市桜区西堀10-10-11
電話番号・・・048-829-7931